マンガ大賞は2008年に創設されたマンガ賞です。
特徴は何といってもマンガ好きの有志が集まって運営していることです。今「本当に面白いマンガ」が大賞を受賞することで賞への信用度が増し、有名な賞になっていきました。
そのようなマンガ大賞ですが、実は大賞を受賞できなかった作品も面白いものばかりです。
この記事では大賞を逃したノミネート作品に注目してみたいと思います。
まずはマンガ大賞の選考条件を確認してみます。
- 前年に “ 新刊の単行本が刊行された、 最大巻数が8巻までの作品 ” が対象とのことです。
- 週刊連載だと3カ月に1巻のペースで新刊が出ます。つまり2年で8巻。
2年経てば既に面白くなっているはず & 8巻というのは手に取りやすいギリギリの巻数、というのが理由のようです。
- 週刊連載だと3カ月に1巻のペースで新刊が出ます。つまり2年で8巻。
- ちなみに、マンガ大賞受賞作は翌年以降除外とのこと。
以上の選考条件から読み解くと「毎年ノミネートされるも大賞を逃し続け、8巻を超えて選考対象から卒業してしまう作品」もあるわけです。
この記事ではそうした作品にスポットを当ててみたいと思います。
大賞受賞作の振り返り
まずは歴代の大賞受賞作を振り返ります。 ( 2024年最新情報です )
初ノミネートで大賞受賞するパターンをストレート受賞と呼び、その逆で何度目かのノミネートで大賞受賞するパターンをリベンジ受賞と呼ぶことにします。
リベンジ受賞 は 赤字 で強調してみました。
ストレート受賞 ( 受賞時:5巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:3巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:1巻 )
第2回 3位 65P ⇒ 第3回 ノミネートせず ⇒ 第4回 リベンジ受賞 ( 受賞時:5巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:2巻 )
第1回 3位 43P ⇒ 以降ノミネートせず ⇒ 第6回 リベンジ受賞 ( 受賞時:5巻 )
第4回 2位 55P ⇒ 第5回 ノミネートせず ⇒ 第6回 2位 78P ⇒ 第7回 リベンジ受賞 ( 受賞時:6巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:4巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:5巻 )
備考:週刊連載で刊行ペースが早く、1巻が出た年にしてラストチャンス
ストレート受賞 ( 受賞時:5巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:6巻 )
備考:週刊連載で刊行ペースが早く、1巻が出た年にしてラストチャンス
ストレート受賞 ( 受賞時:5巻完結 )
備考:唯一完結した状態で大賞受賞
第12回 3位 73P ⇒ 第13回 リベンジ受賞 ( 受賞時:6巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:3巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:3巻 )
ストレート受賞 ( 受賞時:2巻 )
大賞受賞の全16作品のうち、4作品 ( 3月のライオン / 海街diary / 乙嫁語り / ブルーピリオド ) が2度目以降のノミネートでリベンジ受賞しています。
注目したいのは、いずれの4作品もラストチャンスだったというわけではないということ。
「ラストチャンスだから大賞を獲らせたい…!」という作用を否定するつもりはないのですが、それでもそういう後押しなしに大賞を掴んだというのは底力を感じます。
この4作の例外を除くと一度大賞を逃すともうそれっきりというわけです。
大賞を逃し続けた「惜しい作品」たち
それでは、何度もノミネートしたのに大賞を逃し続けた「惜しい作品」を挙げていきます。特に惜しい2位を取った作品はハイライトしています。
2回ノミネート作品
作品 | 1回目ノミネート | 2回目ノミネート | ラストチャンス |
---|---|---|---|
とめはねっ ! 鈴里高校書道部 | 第1回 8位 27P | 第2回 7位 43P | 第5回 |
宇宙兄弟 | 第2回 2位 94P ( 8P差 ) | 第3回 2位 89P ( 5P差 ) | 第3回 |
ドリフターズ | 第4回 10位 35P | 第5回 6位 43P | まだチャンスあり |
ボールルームへようこそ | 第6回 2位 78P ( 11P差 ) | 第8回 6位 40P | 第9回 |
ハイスコアガール | 第6回 4位 62P | 第10回 9位 33P | 第12回 |
BLUE GIANT | 第8回 5位 49P | 第9回 3位 68P | 第9回 |
約束のネバーランド | 第10回 6位 43P | 第11回 11位 26P | 第11回 |
凪のお暇 | 第11回 3位 56P | 第12回 10位 25P | 第15回 |
ミステリと言う勿れ | 第12回 2位 78P ( 16P差 ) | 第13回 6位 54P | 第14回 |
違国日記 | 第12回 4位 45P | 第13回 10位 31P | 第15回 |
メタモルフォーゼの縁側 | 第12回 8位 38P | 第14回 8位 48P | 第15回 |
SPY×FAMILY | 第13回 2位 63P ( 6P差 ) | 第14回 10位 38P | 第15回 |
水は海に向かって流れる | 第13回 5位 56P | 第14回 4位 60P | 第14回 |
チ。-地球の運動について- | 第14回 2位 67P ( 24P差 ) | 第15回 5位 59P | 第16回 |
【推しの子】 | 第14回 5位 59P | 第15回 8位 49P | 第16回 |
正反対な君と僕 | 第16回 3位 65P | 第17回 7位 50P | まだチャンスあり |
天幕のジャードゥーガル | 第16回 5位 59P | 第17回 5位 56P | まだチャンスあり |
リベンジ受賞を逃した2回ノミネート作品は全17作品。そのうち2位を取ったのは5作品 ( 宇宙兄弟 / ボールルームへようこそ / ミステリと言う勿れ / SPY×FAMILY / チ。-地球の運動について- ) でした。
特に惜しかったのは「宇宙兄弟」です。
第1巻が出たのは2008年、翌2009年には8巻まで刊行、とたった2年しかチャンスがありませんでした。そのいずれのチャンスも2位。しかも超僅差。
宇宙兄弟は小学館漫画賞と講談社漫画賞をダブル受賞した数少ない作品ですが、マンガ大賞は惜しくも逃してしまいました。
ちなみに他に2回2位を取った作品は「乙嫁語り」しかありません。こちらは3度目の正直で大賞受賞しましたが、刊行ペースで明暗分かれた感があります。
3回ノミネート作品
作品 | 1回目ノミネート | 2回目ノミネート | 3回目ノミネート | ラストチャンス |
---|---|---|---|---|
アイアムアヒーロー | 第3回 4位 55P | 第4回 3位 51P | 第5回 8位 40P | 第5回 |
僕だけがいない街 | 第7回 2位 82P ( 12P差 ) | 第8回 4位 57P | 第9回 4位 55P | 第10回 |
波よ聞いてくれ | 第9回 6位 43位 | 第10回 5位 48P | 第13回 4位 57P | 第14回 |
ゴールデンゴールド | 第10回 7位 42P | 第11回 12位 13P | 第12回 12位 22P | 第14回 |
女の園の星 | 第14回 7位 57P | 第15回 4位 63P | 第16回 3位 65P | まだチャンスあり |
リベンジ受賞を逃した3回ノミネート作品はグッと数を減らして全4作品のみ。そのうち2位を取ったのは「僕だけがいない街」のみでした。
個人的に面白いと思ったのは、3回にわたって徐々に順位を上げている「波よ聞いてくれ」と「女の園の星」。
8巻までの作品が選考対象ということで、マンガ大賞は最初のインパクトが重視されがちです。
何度もノミネートするうちに徐々に順位を下げてしまう作品が多いのですが、「波よ聞いてくれ」と「女の園の星」の推移は面白いです。
4回ノミネート作品
作品 | 1回目ノミネート | 2回目ノミネート | 3回目ノミネート | 4回目ノミネート | ラストチャンス |
---|---|---|---|---|---|
ダンジョン飯 | 第9回 2位 78P ( 13P差 ) | 第10回 3位 63P | 第11回 4位 52P | 第12回 11位 23P | 第13回 |
唯一4回ノミネートして大賞を逃し続けたのが「ダンジョン飯」。特に初回ノミネートは2位で惜しかったのですが、以降も3位・4位と大賞ニアミスを続けています。
そもそも刊行ペースが遅めの作品でないと4回も候補になれないわけで、その間選考員の熱が冷めずずっと評価され続けるというのがスゴイです。
一番惜しかったのは「宇宙兄弟」と「ダンジョン飯」
複数回ノミネートして大賞を逃し続けた ( 続けている ) 作品は全21作品でした。
その中でも特に、
- たった2回のチャンスいずれも2位だった「宇宙兄弟」
- 4回もノミネートして2位も取った「ダンジョン飯」
この2作品こそが、マンガ大賞受賞作に隠れた一番「惜しい作品」たちと言えるのではないでしょうか。
大賞受賞作だけに注目するのではなく、こういう作品も広く読まれていってほしいと思います。
以上です!