ベイビーステップの池爽児が現実にいたら錦織圭を超えるのか

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スポーツマンガの作者がみな直面するであろう問題に「作中最強キャラをどこまで強くするか」というのがあるかと思います。圧倒的強者感を演出したいけれど、あまりに現実離れすると読者が冷めてしまうかもしれない。

この話題で言うと、ベイビーステップの描写はかなり良い塩梅です。作中の日本人最強キャラ・池爽児は、現実のプロテニス選手・錦織圭に勝ると劣らないキャリアを歩んでいます。

しかしベイビーステップ本編では、池のキャリアはごくごく初期までしか描かれません。このままがケガ無ければ、池はどこまでいけるのか考えてみました。ちなみに私は10年以上ATP ( プロテニス ) を追いかけています。

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池とエーちゃんの差はどれほどか

池は主人公であるエーちゃんと同じ学年の高校生ですが、既にプロとして世界ツアーを転戦している雲の上の存在として描かれます。レベルの違いを説明するために、まずプロテニス界の仕組みを説明します。

プロテニス界 ( ATP ) の仕組み

テニス以外のスポーツでは国毎にリーグがあって、選手はよりレベルの高い国のリーグでのプレーを目指すというのが一般的かと思います。しかしテニスはそうではありません

プロテニスプレーヤーはATP ( Association of Tennis Professionals:男子プロテニス協会 ) という組織に加盟し、ATP`が運営する大会に出場し、そこで好成績を目指して戦います。

勝ち上がりに応じて世界ランキングを決めるポイントが付与され、そのポイントが一番多い人が世界1位となるわけですね。世界ランキング上位であれば大きな大会でシードを与えられ、勝ち上がりに有利になります。

ただ、選手にとって最大の目標は世界1位よりもグランドスラム ( 4大大会 ) での優勝でしょう。これは全てのテニス選手にとっての悲願であり「名誉」も「賞金」も「ポイント」も一番多く獲得できる、最大規模の大会です。

そのグランドスラムでの優勝を夢見て、毎週世界各地で行われているATPの大会を転戦するわけですね。テニスのオフシーズンは12月のみで、それ以外は毎週世界のどこかで大会があります。参加するかどうかは選手自身の判断です。

このようにテニスの世界は信じられないほど過酷です。そのため毎週大会を転戦する世界トップ100位以内の選手は例外なくチームを組んでおり、コーチやフィジカルトレーナーといったスタッフを選手自ら雇用しながら戦っています。

池とエーちゃんの現在地は

ようやく話が戻りまして、そんな世界の中で池のATPランキングは41位 ( 作中最高位 ) です。当然自分のチームを持っており、グランドスラムは予選免除。それどころかあと少しでシード権が与えられるというところまで来ています。

ネタバレ有りでいきますが、エーちゃんも身内で固めた陣営ではありますが自分のチームを持って、ATP250の大会の予選を勝ち抜いて本戦デビューを果たします。本当の意味でプロとしての第1歩と言えます。

ここからエーちゃんが池に追いつくにはATPポイントにして大体1000Pくらい稼ぐ必要があります。250の大会だったら4回優勝が必要で、1大会で稼ぐならグランドスラム準優勝 or マスターズ1000優勝といったところです。

ATPポイントは1年で消失するので、1年の間にそれだけの活躍が必要ということですね。裏を返せば、池はそれだけのことをやり遂げてその位置にいるということです。

錦織圭選手のキャリア

では、池が18歳でたどり着いたATPランキング41位というのがどれほどのものなのか、現実にあり得るレベルなのかというと、まぁあり得るレベルです。

10代でトップ50入りする選手は毎年数人はいるかな、という感じです。10代でのトップ20・トップ10入りとまでなると、かなりレアです ( ちなみに2022年に初めて10代での世界一が現れました ) 。

ただ、日本人でそれを達成できる人が今後現れるかというと、ちょっと考えにくいです。あの錦織選手ですら達成できず、10代での最高順位は56位でした ( 19歳の時のケガが無ければ確実に達成していたでしょうが ) 。

そう考えると18歳にして41位を達成している池は、10代時点でのキャリアは錦織選手よりも格上と言えるかもしれません。

しかし、錦織選手はその後がすごかったです。ケガで1年を棒に振りましたが、1年かけてトップ50入り、更に1年かけてトップ20入りと順調に成績を伸ばしていきました。

そこから2年ほどトップ10の壁の前で足踏みとなりましたが、2014年にはマスターズ1000準優勝 ( 試合中のケガが無ければ絶対勝っていた! ) とグランドスラム全米で準優勝を果たし、翌年には自身最高順位の4位を達成します。

錦織選手はテニス史上最もハイレベルな時代で戦っていた

この4位という順位は、特別な4位です。というのも、錦織選手の時代とその他の時代では4位の価値が全く違います。2010年代はBIG4と呼ばれる選手たちがいて、この選手らで4位までを独占していたからです。

特にBIG4のなかでもロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチはテニス史上最強の3人と言われています。錦織選手がBIG4の最後の一人アンディ・マレーを抜いて4位になった時にも、TOP3はこの3人でした。

この時代に4位に食い込むというのは、他の時代で2位を取るとか、あるいは1位を取るくらい難しいことだと言えると思います。「BIG4被害者の会」なるネットミームが全世界で流布しているくらいですので…。

池が歩むキャリアを想像してみる

池は錦織選手をモデルにしている作者が話していますので、錦織選手くらいまで「強く」なると仮定します。そこまで強くなった池がグランドスラムやマスターズを優勝できるか、世界何位までいけるか考えてみます。

問題は「ベイビーステップの世界にBIG4 ( BIG3 ) が存在するかどうか」に尽きますが、おそらく「存在しない」として話を進めます。作中で世界1位はレヴィナ・マックスでしたが、そのライバルたる2~4位の選手は描かれずでした。

レヴィナ・マックスはスイス人ですのでロジャー・フェデラーを彷彿とさせますし、左利きというのはラファエル・ナダルを彷彿とさせます。現実のBIG4を混ぜて造形したなら、やはり作中にBIG4はいないのでは、と思います。

そうなると池は行くところまで行く可能性が大いにあります。BIG4がモデルのレヴィナが世界1位を譲らないというのはあるかもしれませんが、BIG4相当が1人だけですとグランドスラムにも取りこぼしは出てきます。

そうなると池はランキング2位、グランドスラムも2, 3回優勝する可能性すらあるのでは、と思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。

あくまでフィクション、しかも最終回のその先を夢想しただけの話ではありますが、ATPを追っかけている知識を役立てつつ真面目に考えてみました。

いつかベイビーステップ・デビスカップ編を読めることを夢見つつ、現実の日本テニス界の方も池並みの日本人が現れることを期待していきましょう。

以上です!

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