連載中のマンガをリアルタイムで追おうとすると年単位の付き合いになります。
例えばこんな風に「〇〇編は面白かったのに、△△編は中だるみだったなぁ。でも最終章は最高だったなぁ!」という作品があったとします。
「その人にとってその作品がどれだけ面白かったか」というのは、この図の「青い面積」引くことの「赤い面積」で説明できそうです。ただ、この面積はマンガが完結しないと確定しません。
というわけで、本記事ではその年に完結して評価確定できるようになったマンガをピックアップしてランキングにしたいと思います。あくまで個人的なランキングですが、もしよければ参考にしてください。
2023年に完結したマンガのランキング
ランキングの前に、2023年に完結した主なマンガを列挙してみます。マンガ賞受賞作は青字、アニメ化作品は赤字、マンガ賞 & アニメ化は紫字にしています
┗ 2017年TVアニメ化
その他の同月完結作:殺し愛 / うちのメイドがウザすぎる!
┗ 2022年TVアニメ化
その他の同月完結作:こみっくがーるず
その他の同月完結作:戦×恋 / 久保さんは僕を許さない
その他の同月完結作:阿波連さんははかれない
その他の同月完結作:賭󠄀ケグルイ双 / 終末のハーレム / くノ一ツバキの胸の内 / カノジョも彼女
┗ 2017年マンガ賞受賞
2018年開始:バキ道 ( 板垣恵介 ) / 掲載誌:週刊少年チャンピオン ( 秋田書店 ) / 全17巻
その他の同月完結作:もののがたり / かつて神だった獣たちへ / コタローは1人暮らし / 結婚するって、本当ですか
2020年開始:マッシュル – MASHLE – ( 甲本一 ) / 掲載誌:週刊少年ジャンプ ( 集英社 ) / 全18巻
┗ 2023年TVアニメ化
2020年開始:往生際の意味を知れ! ( 米代恭 ) / 掲載誌:ビッグコミックスピリッツ ( 小学館 ) / 全8巻
その他の同月完結作:恋に無駄口 / ザ・ファブル The second contact
2019年開始:君は放課後インソムニア ( オジロマコト ) / 掲載誌:ビッグコミックスピリッツ ( 小学館 ) / 全14巻
┗ 2023年TVアニメ化
その他の同月完結作:おかえりアリス
┗ 2024年TVアニメ化
2020年開始:あやかしトライアングル ( 矢吹健太朗 ) / 掲載誌:週刊少年ジャンプ ⇒ 少年ジャンプ+ ( 集英社 ) / 全16巻
┗ 2023年TVアニメ化
その他の同月完結作:血の轍 / カナカナ
┗ 2018年TVアニメ化 / 2021年マンガ賞受賞
その他の同月完結作:ダーウィンズゲーム / RPG不動産 / サクラ、サク。
┗ 2017年マンガ賞受賞・TVアニメ化
2019年開始:それでも歩は寄せてくる ( 山本崇一朗 ) / 掲載誌:週刊少年マガジン ( 講談社 ) / 全17巻
┗ 2022年TVアニメ化
その他の同月完結作:明日、私は誰かのカノジョ
┗ 2018年TVアニメ化
その他の同月完結作:くまみこ
以上が2023年に完結した主な作品です。
私自身この全てを読んでいるわけではありませんが、これらの作品をランキングにしたいと思います。あくまで個人的な趣向のランキングなので、参考程度ご覧ください。
6位:往生際の意味を知れ! ( 米代恭 )
「元カノと結婚したいです」合コンで好きな女性のタイプを聞かれ、真っ直ぐに答える主人公・市松 海路。市役所に公務員として勤めながら、7年前に付き合っていた元恋人・日和のことを忘れられず、彼女との思い出の品に埋めつくされた部屋で暮らしている。そんな彼のもとに突如現れた日和は7年前と変わらない柔和な笑みを浮かべながら彼に告げる。「市松くんの精子がほしい」。
TV Bros. WEBより
まるでジェットコースターのような物語展開に引き込まれてしまった作品です。主人公とヒロインの性格・行動がぶっ飛んでいて、「そうはならんやろ」と思いながら最後まで読み切ってしまいました。
物語を展開しやすくするためにぶっ飛んだキャラを置くというのはよくある手法だと思いますが、このマンガは主人公・ヒロイン以外のキャラも ( 程度は様々ですが ) ぶっ飛んでいるのでカオスです。
そう聞くと収拾が付かないように聞こえるかもしれませんが、物語の落としどころは個人的に気に入っています。読後感までジェットコースターのような感じで、「あぁ終わったんだ」という妙な心地よさを感じました。
5位:それでも歩は寄せてくる ( 山本崇一朗 )
この恋、詰むや詰まざるや…?将棋の初心者・田中歩は部長の八乙女うるしに勝って告白したい。棋力は程遠いけれども、ぐいぐい攻めてくる歩の姿勢に別の意味でセンパイは“詰む”かもしれない…というお話。
講談社HPより
キャラ魅力に尽きる作品だと思います。
主人公とヒロイン、そこに後輩キャラも加わって三角関係になるのですが、あくまで爽やかな三角関係が展開されます。優しい世界すぎて現実味が無かったですが、私はどのキャラも推せたので終始楽しめました。
最初数巻だけを読むとラブコメショートが延々続くように思ってしまうかもしれませんが、作中学年が進んで徐々に関係性が変化していきます。しっかりストーリーが展開されるのが良かったです。ギャグも好みでした。
4位:おとなになっても ( 志村貴子 )
小学校の先生をしている綾乃は、久しぶりに立ち寄った行きつけのバーで、朱里に声をかけられる。二人は初対面ながら意気投合し、そのまま朱里の部屋へ。キスをしてまた会うことを約束する。しかし数日後、朱里のバーに現れた綾乃は「夫」を連れてきて……!? 初めての気持ちに戸惑う綾乃と、そんな綾乃に振り回されながらも惹かれる心を止められない朱里。30代半ばになってもまだ全然おとなじゃない。胸騒ぎが止まらない、少しビターな大人百合、開幕!
講談社HPより
あらすじの通り不倫レズものではあるのですが、実際はかなり入り組んだ人間関係が描かれます。
登場人物それぞれが「現実にこういう人いるよね」というムーブをするのですが、100%善人も100%悪人もいなくて、みな良いところ悪いところの両面が描かれます。思わず登場人物を自分や知人に重ねながら読んでしまいました。
こんな人間関係さすがに複雑すぎてフィクションだよなぁと思う一方で、登場人物一人ひとりの造形はすごくリアルなので、実はこういう話って世の中ありふれているのかな、とも思わされました。
私はこの作者の作品がいずれも大好きでして、会話中の微妙な「間」を描くのが誰よりも上手いと思っています。本作を気に入った方は是非他作品も読んで欲しいです。
3位:君は放課後インソムニア ( オジロマコト )
文化祭の準備中、教室の隅で居眠りしていた中見丸太はクラスの女子に頼まれて天文台まで段ボールを取りに行く。その天文台は女子天文部員の霊が出ると噂になっている場所だった。いわくつきの天文部も今は活動しておらず、倉庫として使われている天文台に入っていくと、そこには廃棄されたロッカーの中で眠る少女がいた。その少女は、丸太のクラスメイトの曲伊咲。丸太と伊咲は同じ悩みを抱えていることを知る。
TVアニメHPより
まぶしいくらいの青春恋愛マンガでした。
あらすじにある、主人公とヒロインが抱える同じ悩みは不眠症 ( インソムニア ) です。それぞれ不眠症の原因がはっきりあるのですが、やがてその原因が恋愛の障害にまでなっていきます。
両想いだからこそ、それぞれが抱える悩みに直面せざるを得なくなり、圧し潰されそうになってしまう描写は心苦しかったです。それでも、家族・友人のサポートを受けつつも乗り越えようとする姿に感動しました。
自分が辛いときに家族・友人が近くにいてくれるのは、自分がこれまで家族・友人を支えてきたからであって、月並みですが人というのは支え合って生きているんだなと思わされました。高校生の成長物語として完璧な作品でした。
2位:違国日記 ( ヤマシタトモコ )
少女小説家の高代槇生は、疎遠だった姉の死を知り、遺された姪の田汲朝を引き取る事を決意する。人見知りで、誰かと暮らすには不向きな性格の槇生は、突然降って湧いたような同居人の存在に困惑する。一方で15歳の朝は、明らかに両親や先生とはタイプの違う「大人らしくない大人」である槇生との暮らしを素直に受け入れ、新たな生活に順応していく。不器用人間と子犬のような姪の、突然変化した日常を描く歳の差同居譚。
マンガペディアより
「心が救われる」というキャッチフレーズで広告が打たれていますが、その表現に誇張無しと思わされた神マンガでした。
人間関係に関する悩みがいくつも折り重なるように描かれるのが本作の特徴でしょうか。一部群像劇のようになっていて、親子関係・夫婦関係・恋愛関係・友人関係に悩む人物が描かれます。
それぞれが抱える事情に対して私は現実味を感じました。魔法のような解決法は一切描かれず、苦しみながらも懸命に生活するキャラに少しの勇気をもらうような心地が、「心が救われる」というフレーズに込められていそうです。
刺さる方にはとことん深くまで刺さるマンガだと思います。まるでフィクションが自分に寄り添ってくれているような、そんな読後感になれる物語って稀有です。
1位:ダンジョン飯 ( 九井諒子 )
ダンジョン飯。 それは、”食う”か”食われる”か―――
ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた! 命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。 再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。 妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。 「食糧は、迷宮内で自給自足する!」 スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン! 襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!
TVアニメHPより
マンガ史に残る大傑作だと思っています。
タイトルだけを見ると「異世界ファンタジー」×「飯もの」という飽和ジャンルの掛け合わせですが、粗悪な作品も多いジャンルにあって他作品とは一線も二線も何線も画す作品です。
世界観の作り込み・壮大な物語スケール・複雑な登場人物関係とそれをシンプルに描く巧みさ・状況次第で主人公パーティーの目先目標が変化する飽きさせない物語展開・画力の高さ・ギャグの切れ…その全てが超一級品です。
特に「世界観の作り込み」と「パズルのピースをはめ込むかのような緻密な物語展開」は、進撃の巨人を彷彿とさせられました。雰囲気の異なる両作ですが、両作とも好きだという方は多いのではと思っています。
2022年に完結したマンガのランキング
ランキングの前に、2022年に完結した主なマンガを列挙してみます。マンガ賞受賞作は青字、アニメ化作品は赤字、マンガ賞 & アニメ化は紫字にしています。
┗ 2017年TVアニメ化
その他の同月完結作:俺だけレベルアップな件 / 薔薇王の葬列
┗ 2020年マンガ賞受賞 / 2024年アニメ映画化
2015年開始:炎炎ノ消防隊 ( 大久保篤 ) / 掲載誌:週刊少年マガジン ( 講談社 ) / 全34巻
┗ 2019年TVアニメ化
その他の同月完結作:UQ HOLDER! / 真夜中のオカルト公務員
┗ 2018年マンガ賞受賞 / 2019年TVアニメ化
その他の同月完結作:君と僕。 / 上野さんは不器用 / タコピーの原罪
┗ 2016年マンガ賞受賞 / 2018年TVアニメ化
2020年開始:チ。-地球の運動について- ( 魚豊 ) / 掲載誌:ビッグコミックスピリッツ ( 小学館 ) / 全8巻
┗ 2022年マンガ賞受賞
その他の同月完結作:ブレンド・S / 保安官エヴァンスの嘘 〜DEAD OR LOVE〜 / さよなら絵梨
┗ 2021年TVアニメ化
その他の同月完結作:37.5℃の涙 / 名探偵コナン ゼロの日常
2017年開始:ハコヅメ~交番女子の逆襲~ ( 泰三子 ) / 掲載誌:モーニング ( 講談社 ) / 全23巻 ( 第1部完 )
┗ 2020年マンガ賞受賞 / 2022年TVアニメ化
その他の同月完結作:消えた初恋
┗ 2020年マンガ賞受賞
その他の同月完結作:夢で見たあの子のために / プラネット・ウィズ
┗ 2011年TVアニメ化 / 2011年マンガ賞受賞
2010年開始:ましろのおと ( 羅川真里茂 ) / 掲載誌:月刊少年マガジン ( 講談社 ) / 全31巻
┗ 2012年マンガ賞受賞 / 2021年TVアニメ化
┗ 2019年TVアニメ化
その他の同月完結作:ぎんぎつね / BE BLUES ! ~ 青になれ ~ / 左ききのエレン
┗ 2019年TVアニメ化 / 2019年マンガ賞受賞
2017年開始:東京卍リベンジャーズ ( 和久井健 ) / 掲載誌:週刊ヤングジャンプ ( 集英社 ) / 全31巻
┗ 2020年マンガ賞受賞 / 2021年TVアニメ化
その他の同月完結作:あそびあそばせ
┗ 2016年TVアニメ化
その他の同月完結作:ドラゴン、家を買う。 / 妻、小学生になる。
以上が2022年に完結した主な作品です。
6位:かぐや様は告らせたい ~ 天才たちの恋愛頭脳戦 ~ ( 赤坂アカ )
私立秀知院学園高等部に通う白銀御行と四宮かぐやは、生徒会会長と副会長として、全校生徒の憧れの存在。2人は本当は両想いなのだが、プライドの高さが邪魔して素直になれずにいた。しかし、月日が経っても関係がまるで進展しないのに業を煮やした2人は、同時に「相手から告白するように仕向けよう」と考えるようになる。
マンガペディアより
ラブもコメも揃った、ラブコメの大傑作になるはずだった作品です。中盤以降の失速が本当に惜しまれます。
ラブコメものって実は難しくて、ラブメインで申し訳程度のコメになっていたり、その逆になっていたり。高いレベルで両方が揃っている作品ってなかなか無いと思っています。
かぐや様は、中盤までは素晴らしいラブコメでした。終盤はラブの展開もコメの切れも落ちますが、それも中盤までの出来と比べての話であって、一気読みすればそこまで気にならないかもしれません。
アニメが素晴らしいのでそちらから入るのもありかもしれません。終盤が少し残念とは言いましたが、それを理由に読まないというのはもったいない面白さです。
5位:チ。-地球の運動について- ( 魚豊 )
舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。合理性を最も重んじるラファウにとってもそれは当然の選択であり、合理性に従っている限り世界は“チョロい”はずだった。しかし、ある日ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは、異端思想ド真ン中の「ある真理」だった――
小学館HPより
事前情報何もなしに読み始めてほしい作品です。特に1巻を最大限楽しむためには、是非そうすべきだと思っています。
人の価値観・信念はバラバラかと思いますが、本作で描かれるのは何より知的探求心を大事にする人間です。宗教という体制に逆らってでも、アブない研究を続けようとする人間。
そうした人間を肯定する、人間賛歌のような作品です。テーマは首尾一貫としていて、テンポも速いのでサクサク進んでいきます。
ネタバレを避けようとして抽象的な説明になってしまいましたが、まずはサンデーうぇぶりで1巻だけでも読まれることをオススメします。
4位:惰性67パーセント ( 紙魚丸 )
吉澤みなみは、ごく普通の、一人暮らしをしている美大に通う女子で、漫研に所属している。ある時、女友達の北原萌に、漫画の作画上の悩みについて相談したところ、アドバイザーとして2人の男子、西田と伊東を紹介され、自宅訪問を受ける。この日をきっかけに、4人は仲良しグループを形成。主にみなみが住むアパートを舞台に、ほんのりと青春していて、しかしどちらかというと、主に下品なエピソードがてんこ盛りの日々を繰り広げることになる。
マンガペディアより
くだらない下品なギャグマンガですが、それが好きでした。
大学生がモラトリアムしている作品で言うとげんしけんが思いつきますが、少し似ているところがあると思っています。より下品で、関係性の変化が鈍めのげんしけんという感じです。
ギャグ全振りのマンガですので魅力の説明が難しいのですが、こればかりは合う合わないがあると思います。下品なのでなおさらに。
私は好きですが、みなさんも試しに少しだけ読んでみて判断されるといいと思います。当たり回もハズれ回もありますが、ノリ自体は1話のものが延々続くと思って良いです。
3位:Dr.STONE ( 原作:稲垣理一郎 / 作画:Boichi )
一瞬にして世界中すべての人間が石と化す、謎の現象に巻き込まれた高校生の大樹。数千年後──。目覚めた大樹とその友・千空はゼロから文明を作ることを決意する!! 空前絶後のSFサバイバル冒険譚、開幕!!
集英社HPより
スケールの大きい少年マンガです。
謎の石化から目覚めた主人公は、まず火を起こすところから始めますが、最終的にはどこまで行くねんという感じのところまで文明を発展させていきます。その様は、まるでゲームの面を次々クリアしていくような感じです。
利害が対立する別組織との抗争も描かれますが、そこは頭を使って戦う主人公らしく、うまいこと利害構造を変化させて次々に敵を仲間へと引き込んでいきます。その爽快感は、やはりゲームに似たものを感じます。
そうしたバトルは何度も描かれますが、特に終盤最大のバトル展開はまさに感動モノでした。展開・演出・作画の全てがハマっていて、本当に素晴らしかったです。
原作・作画の両方が週刊誌とは思えないクオリティです。是非読んでいただきたい作品です。
2位:ゴールデンカムイ ( 野田サトル )
『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!
集英社HPより
ゴールデンカムイは骨太な傑作青年マンガです。金塊を巡る壮大なドラマを、31巻にわたって描き切りました。
とにかく登場人物が多いのですが、その全員がバラバラの思惑で金塊を目指していきます。金塊を巡る裏工作的な情報戦が描かれたかと思えば、多数の勢力が絡まり合う派手な戦闘シーンも描かれて、密度が濃い展開が続きます。
登場人物それぞれの行動原理がはっきりしているので、複雑な展開であっても読み応え十分です。ともすれば「ごちゃごちゃしているなぁ」で終わりそうな描写を、「今のところ読み返そう」と思わせてしまうのが本作のすごさです。
要はキャラ造形がしっかりしている、というのに尽きるのだと思います。主人公チームは感情移入しやすいですし、敵キャラたちも味わい深いです。この素晴らしい群像劇を読まない手は無いです。
1位:ちはやふる ( 末次由紀 )
まだ“情熱”って言葉さえ知らない、小学校6年生の千早。そんな彼女が出会ったのは、福井からやってきた転校生・新。大人しくて無口な新だったが、彼には意外な特技があった。それは、小倉百人一首競技かるた。千早は、誰よりも速く誰よりも夢中に札を払う新の姿に衝撃を受ける。しかし、そんな新を釘付けにしたのは千早のずば抜けた「才能」だった……。まぶしいほどに一途な思いが交差する青春ストーリー、いよいよ開幕!!
講談社HPより
2022年は、連載期間15年・全50巻の大作であるちはやふるが完結した年です。少なくとも私の中のマンガ史では、そのように刻まれています。
本作は競技かるたの普及に貢献したとよく言われますが、それと同じくらい少女マンガの間口を広げたとも思っています。普段少女マンガを読まないけどちはやふるは読んでいる、という男性ってかなり多い印象です。
アニメも実写もヒットし、老若男女に受け入れられました。作中のキャラたちは百人一首が好きでひたすらに百人一首に打ち込むのですが、好きなものに青春を捧げるそのひたむきさが、世代・性別を超えた人気につながりました。
とにかくアツいマンガです。少女マンガなのに恋愛要素を忘れてしまうくらいアツいのですが、その一方でところどころ挟まれる恋愛描写の方もちゃんと素晴らしいです。
ちなみに三角関係モノなので結末には賛否があるのかもしれませんが、私としては推しが報われたのでなお良かったです。
2021年に完結したマンガのランキング
ランキングの前に、2021年に完結した主なマンガを列挙してみます。マンガ賞受賞作は青字、アニメ化作品は赤字、マンガ賞 & アニメ化は紫字にしています。
┗ 2016年マンガ賞受賞 & TVアニメ化
2015年開始:はたらく細胞 ( 清水茜 ) / 掲載誌:月刊少年シリウス ( 講談社 ) / 全6巻
┗ 2018年TVアニメ化
2018年開始:はたらく細胞BLACK ( 原作:原田重光 / 作画:初嘉屋一生 ) / 掲載誌:モーニング ( 講談社 ) / 全8巻
┗ 2021年TVアニメ化
その他の同月完結作:D・N・ANGEL / マージナル・オペレーション / パーフェクトワールド / ひなこのーと / プラチナエンド / 地獄楽 / あせとせっけん
┗ 2013年TVアニメ化
2012年開始:亜人 ( 桜井画門 ) / 掲載誌:good!アフタヌーン ( 講談社 ) / 全17巻
┗ 2015年アニメ映画化
2017年開始:サマータイムレンダ ( 田中靖規 ) / 掲載サイト:少年ジャンプ+ ( 集英社 ) / 全13巻
┗ 2022年TVアニメ化
その他の同月完結作:魔法少女特殊戦あすか / CITY / ド級戦隊エグゼロス
┗ 2021年TVアニメ化
┗ 2011年マンガ賞受賞 / 2013年TVアニメ化
その他の同月完結作:不機嫌なモノノケ庵 / ひとりぼっちの〇〇生活 / 恋と呼ぶには気持ち悪い
┗ 2016年TVアニメ化
その他の同月完結作:王室教室ハイネ / 阿・吽 / 寄生獣リバーシ
┗ 2018年マンガ賞受賞
その他の同月完結作:Levius/est
┗ 2008年TVアニメ化
2014年開始:ヲタクに恋は難しい ( ふじた ) / 掲載サイト:comic POOL ( 一迅社 ) / 全11巻
┗ 2018年TVアニメ化
その他の同月完結作:聖闘士星矢 セインティア翔 / ランウェイで笑って / 双亡亭壊すべし / ルックバック
┗ 2013年マンガ賞受賞
2013年開始:NEW GAME! ( 得能正太郎 ) / 掲載誌:まんがタイムきららキャラット ( 芳文社 ) / 全13巻
┗ 2016年TVアニメ化
その他の同月完結作:人形の国 / 織田シナモン信長 / バトルグラウンドワーカーズ
┗ 2019年TVアニメ化
その他の同月完結作:kiss×sis
その他の同月完結作:カーニヴァル / となりの吸血鬼さん
その他の同月完結作:生徒会役員共
┗ 2016年TVアニメ化
以上が2021年に完結した主な作品です。
6位:ジョジョリオン ( 荒木飛呂彦 )
S市杜王町。震災後、突如、町の中にあらわれた「壁の目」と呼ばれる隆起物付近で、高校生の広瀬康穂は謎の青年を発見した。彼の身元を突き止める事にした康穂であったが、不可解な現象が2人の周りで起こり始め…!
集英社HPより
ジョジョは4部と7部が好きです。8部であるこのジョジョリオンは、4部の杜王町が舞台で、時間軸的には7部とつながっているとあって、期待していました。
もちろん面白かったのですが、個人的には期待ほど刺さる感じではなかったので、この順位です。
「主人公である定助が記憶を取り戻すパート」と「ロカカカを奪い合うパート」に分かれているのですが、それぞれしっかり描こうとすぎて間延びしてしまっている感じがしてしまいました。
とはいえ、記憶パートの日常描写は4部を彷彿とさせましたし、ロカカカパートの争奪戦は7部の遺体争奪戦のセルフオマージュのようでもあって、全体を通してシリーズのファンだったら面白く読めます。
5位:はたらく細胞 ( 清水茜 ) / はたらく細胞BLACK ( 原作:原田重光 / 作画:初嘉屋一生 )
白血球、赤血球、血小板、マクロファージ、記憶細胞、キラーT細胞、NK細胞、B細胞、マスト細胞…etc.人間の細胞の数、およそ60兆個! 彼らは皆、体の中で休むことなく働いている! 体内に入ってきた細菌・ウィルス・異物には徹底抗戦! そこには細胞たちの知られざるドラマがあった!
月刊少年シリウスHPより
喫煙、ED、二日酔い……。不健康な人間の体内ではたらく細胞たちに休みなどない!
理不尽なクレーム、失踪する同僚、何の役に立っているのか分からない仕事……。それでも、はたらく以外の選択肢はない!
“働き方改革”なんて微塵も導入される気配のない、細胞たちの“ブラック”労働活劇!
モーニングHPより
はたらく細胞の本編 & スピンオフですが、2021年1月に同時に完結しました。スピンオフの方も面白いので、合わせてこの順位としました。実際、私はこの「BLACK」というスピンオフの方が好きです。
はたらく細胞はとにかくアイデアが素晴らしく、細胞たちがはたらく世界 ( 体 ) ごとにスピンオフが展開されています。
この「BLACK」は酒・タバコに依存して糖尿病に患っている成人男性の体の中が舞台です。他には女性の体が舞台の「LADY」や、赤ちゃんの体が舞台の「BABY」などもあります。
私が男だからというのもありますが、「BLACK」は自身の体に気をつかおうという啓蒙マンガになりました。モーニングに掲載されたこのマンガは多くの男性に刺さったことと思います。是非読んで健康意識を増進しましょう。
4位:DAYS ( 安田剛士 )
嵐の夜、ふたりの少年が出会った。何のとりえもない、特技もない、けれど人知れず、熱い心を秘めた少年・柄本つくし。孤独なサッカーの天才・風間陣。嵐の夜、交わるはずのないふたりが出会ったとき、高校サッカーに旋風を巻き起こす、灼熱、感動、奇跡の物語が幕を開ける!!
講談社HPより
スラムダンクもそうなんですが、主人公がド素人の部活モノは胸を打ちます。
さすがにスラムダンクには及ばないですが、DAYSはスラムダンクと似ているところがあると思います。チームメート一人ひとりのキャラが立っていること。一度負けた高校との再戦。高校王者との死闘。などなど。
リスペクトして似せようと思っても、描画力が無いと途端に陳腐に見えます。そうして失敗したマンガも数多いなか、DAYSはしっかり昇華できていると思います。
巻数が長いのは一つ一つの試合をしっかり描いているためで、引き延ばしはありません。終わり方が良いので読後の満足感が心地よかったです。
3位:ホリミヤ ( 原作:HERO / 作画:萩原ダイスケ )
一見派手だけど、実は地味で家庭的な女子高生・堀さんと、学校では根暗地味メガネだけど、実はピアスだらけの美形男子・宮村くん。真逆のようで似ているような、二人が偶然出会ったら…!?
スクウェア・エニックスHPより
思い出補正です。皆さんご存じか分かりませんが、2007~2008年頃は個人サイトでのWebマンガが色々と発表されていました。
読解アヘンというサイトで公開されていた ( 今も公開されている ) 「堀さんと宮村くん」もその一つで、人気を博していました。当時高校生だった私も熱心な読者の一人でした。
オリジナル版は今読んでも面白いのですが、やはり初見の方にお勧めしたいのはこのリメイク版「ホリミヤ」です。奥行きのある画面の方が入っていきやすいですよね。
古参としては、良クオリティでのリメイクはうれしかったです。大人になってから初めて読んでも面白いマンガだと思いますが、個人的な思い入れの分高めの順位にしてしまったかもしれません。
2位:亜人 ( 桜井画門 )
「亜人」と呼ばれるその生物は「死なない」。高校生・永井圭はある日、交通事故で死ぬが、その直後に生き返った。それは、彼が亜人であり、人間ではないことを意味する。圭をとりまく環境は一変した。彼は人間たちから逃げ惑うことになる。友人のカイは怯える圭を助けるために駆けつけ、二人で人里を離れて山の中に逃げ込んだ。そんな彼に人間と敵対する亜人たちが接触してきた。
講談社HPより
亜人は良質・正統な青年バトルマンガです。
例えるなら寄生獣をアクション重視に寄せた感じでしょうか。亜人という生物の性質を生かしたアイデアバトルは、寄生生物同士の戦いに通じるものがあります。それでいて、アクションシーンは寄生獣よりも上です。
何よりボスが魅力的です。クレイジーでありながら、その行動原理は一貫していて、どんな状況にも臨機応変に最適解を選んでくるため相対時の絶望感がすごいです。
このマンガは特に強くオススメしたいです。ランキングは2位にしましたが、正直3位以下より断然面白いです。
余談ですが、巻を追うごとに登場人物の表情が険しくなっていきます。同じ雑誌のはねバド!も同様でしたので、そういう決まりでもあるのかと笑ってしまいました。
1位:進撃の巨人 ( 諫山創 )
今から107年前、人類は突如出現した人を食う巨人によって滅亡の危機に立たされた。生き残った人類は、ウォール・マリア、ウォール・ローゼ、ウォール・シーナという巨大な三重の壁の内側に生活圏を確保し、壁外への自由と引き換えに辛うじて侵略を防いでいた。
壁の内側に住む人類は、巨人の脅威を忘れて平和な日々の生活を送っていたが、想像を絶する巨大な巨人の出現により、絶望的な戦いが始まってしまう。
壁の外の世界を夢見る少年エレン・イェーガーは家族を失った憎しみで巨人に立ち向かう。
マンガペディアより
迷わず1位です。
進撃を1位にしたくて、この記事を書きました。2021年は進撃に尽きるなぁとしみじみ思い返しているときに「他に2021年に完結したマンガって何だっけ」となったんですよね。
皆さん既に読んでいると思うので少しだけネタバレですが、私はマーレ編に入ってからテンションが上がりっぱなしでした。物語途中で視点が変わる・主人公が一時的に変わる展開ってアツいです。
このランキングを続けるなら、良作があまりリストアップされない外れ年というのも今後出てきそうです。しかし2021年に関しては進撃があるというだけで当たり年でしょう。
来年 ( 2024年 ) の展望
この記事を加筆修正する形で2024年以降も毎年ランキングしていく予定です。
皆さんにとって、まだ読んでいない面白い作品に出会うきっかけになれれば嬉しいです。
以上です!